この記事は10年以上も前に探偵事務所で探偵をやっていた私が、現実に依頼された結婚調査の内容を紹介いたします。

いま結婚調査を考えている方、あるいは両親、祖父母のかたは参考にしてみてください。

探偵と言えば身近にいない職業ですしほとんどの方は一生に1度依頼することがあるか無いかだと思います。

この記事を読んでいただければ結婚調査の具体的な方法、判明する事、調査をしなかったときのリスク等も明らかになるでしょう。

「孫娘のボーイフレンドは大丈夫?」

今回の依頼者はS県の病院の院長先生H氏(65)です。

H氏の依頼内容は、溺愛して止まない、孫娘I子さん(18)のボーイフレンドK氏(25)の家柄や素行を調査することです。その目的は、I子のボーイフレンドとして相応しいかどうかを見極めるためでした。

結婚調査で実際に行った張り込み

H氏からK氏の顔写真と住所を聞いた私は、まず初めにK氏の自宅周辺で張り込みを朝6時から開始しました。

張り込みが容易に可能かどうかを事前に調査するのが、探偵が最初にやるべきことですが、幸いにもK氏の自宅の前にだだっ広い月極の駐車場があったため、張り込み場所を確保することができました。

私は、この駐車場に張り込み用のワンボックスカーを駐車し、車内からK氏の自宅玄関の様子を監視することにしました。

余談ですがこういう場合、ワンボックスカーのエンジンはかけない。エンジンがかかっていると、車内に人が乗っていることをK氏やその他の第三者に気づかれてしまうからです。夏場や冬場の張り込み調査を探偵が嫌う理由はココにあります。

調査開始から1時間が経過し、K氏が自宅から現れました。K氏は、私私が張り込んでいた駐車場に停めてあった真っ赤なスポーツカーに乗り込むと、駐車場を後に走り出したのです。

私は、すぐにK氏の自宅から100m程度離れたコンビニで待機していた同僚の探偵Yに連絡し、K氏のスポーツカーの追尾を指示しました。指示を受けた探偵YはK氏の車両を確認するや、400ccの中型バイクでK氏の追尾を開始しました。

その後、私もワンボックスカーを発進させ、K氏を追尾中の探偵Yと携帯電話で通信しながら、K氏のスポーツカーの方角へ向かいます。

K氏が自宅を出てから30分ほどで、K氏のスポーツカーはとある自動車会社の製造工場へ入ってきました。この工場の門には、守衛が常駐しているため、通行証を見せないと工場内には入れません。

そのため、私は、工場の出入り口が見える向かいの公園の駐車場にワンボックスカーを駐車し、K氏が工場から出てくるのを待つことにしました。

夕方5時を過ぎる頃、K氏のスポーツカーが工場から出てくると、私はワンボックスカーで、K氏の尾行を開始しました。

その後、K氏は自宅近くのコンビニに立ち寄り、弁当とビールを購入すると、自宅へ帰宅しました。この日は、K氏の様子に特に変わった点は確認されませんでした。

翌日の動きもしっかり張り込みします

次の日も、K氏を張り込むことに・・・。当然、この日も出勤すると思いきや、8時になっても自宅から出てくる気配はありません

「おかしい・・・」私は、コンビニに待機しているもう1人の同僚探偵Yに、K氏の自宅の電気メーターが動いているか確認するように指示しました。

探偵Yから、通常の速さで電気メーターが動いていて、換気扇も回っていると報告を受けました。

その日は、結局、K氏は一度も外出することなく、自宅に居続けていたことがわかりました。

「外出もせず、自宅で何をしているのだろう?」私は不思議に思いました。それにしても、ワンボックスカーの車内が暑い!真夏の最中に、エンジン(冷房)をかけずに居続けなければならないのは、探偵にとって過酷な状況です。

自宅から出てくれなければ結婚調査のしようがない

しかし、ここからが地獄でした。なんとK氏が出勤したのは調査期間1週間のうち最初の1日だけで、残りの日は、ほぼ自宅にこもったままだったからです。外出をしても、せいぜい近所のコンビニに弁当を買いにいくことくらいだったのです。

こうなると、素行調査で調査可能な範囲にも、探偵の体力的にも限界があります。私は、所長Xに相談し、所長XがK氏の身元調査を行いました。

※身元調査について
この調査は情報屋と呼ばれるプロに頼むことが多かったのですが20年ちかく前の話ですと、現代では考えられないようなコンプライアンス的にアウトな手法が使われていたと推測します。

K氏の身元、親族や、出身地を調査

身元調査の結果、K氏の母親がG県に住んでいることが判明しました。所長Xは、G県に出張し、K氏の母親の家の周辺で聞込み調査を行ったのです。

※聞き込み調査について
探偵はだれだれの知り合いとか、遠い親戚とかを名乗ったり、架空の名刺を作り、例えばどこどこ新聞の○○という記者で、少しお話しを聞かせてくださいなどといった聞込みを行います。
人を騙すことは基本的にはいけないことですが、情報を聞き出すための芝居は必須のスキルになります。
この場合、男性より女性に聞き込むのがコツです。女性は生来おしゃべりなので、気を許せば何でも話してくれます。菓子折り(もちろん経費です)をもっていったりして、相手の心をほぐすなど、情報を得るためには、あらゆる工作を試みていました。。

聞込み調査の結果、K氏と母親は、K氏が幼い頃から二人で、この借家で暮らしていたことがわかりました。K氏の母親は地元の縫製工場にパートタイマーで勤務していました。

母子二人といえ、収入は決して十分なものではなく、小中学校の給食費も満足に支払えない状況だったようです。

さらに、K氏が中学生時代に、クラスメートからイジメを受けていたことも判明しました。

そして、衝撃的な事実が判明してしまいました。なんと、K氏はその中学時代に、イジメの首謀者を待ち伏せし、大ケガを負わせていたということなのです。

このことは、当時、地元ではかなりの騒ぎになったらしく、K氏の母親は、ケガを負ったイジメの首謀者の両親に何度も謝りに・・・。そのとき先方の両親から罵声を浴びせられたK氏の母親は、精神的なショックでふさぎ込むようになり、パートに出ることもできなくなったようです。

K氏の家庭はさらに貧しい状況に追い込まれることになりました。

そのため、K氏は高校に進学することもできず、中学を卒業すると自宅を出て、現在のS県へ移り住み、アルバイトや期間雇用労働者としての生活をスタートさせます。

しかし、中学卒業という履歴では、日本社会では中々認められず、もともとイジメられるほど気弱なK氏がまともな職業につける状態ではありません。

そんなK氏とI子さんがなぜ付き合うようになったのでしょうか・・・?

どうやらネットのサイトで知り合い、K氏のことを一目見たI子さんがK氏に一目ぼれをしてしまったようです。(K氏と別な探偵が友達関係になるなどができれば聞き出すことは容易です)(さらに余談ですが、K氏はいわゆるイケメンです。)

結婚調査の結果を報告

さて、1週間の調査を終え、所長Xは、今回の調査結果をH氏に報告するのをためらっていました。

その理由は言うまでもないのですが、調査の結果、K氏の家柄はお世辞にも良いとはいえないことが判明しました。おまけに、当のK氏本人はろくに仕事もせず、自宅アパートにとどまっているだけの無気力な生活を送っているだけ・・・。

こんな状況をH氏に報告すれば、H氏は当然に立腹するに違いありません。なぜなら、H氏の病院はS県では有数の産婦人科専門の病院で、由緒正しい家柄だからなのです。

つまり、I子さんはH家のお嬢様ということになります。H氏とすれば、当然にI子さんにふさわしい相手でなければ結婚を認めないででしょう。

所長Xが報告をためらう理由は、次にH氏から依頼される内容が二人を別れさせることだとわかっていたからです。

※クライアントへの結婚調査報告について
調査の様子を時刻と共に内容を詳細に記録した報告書を提出します。この報告書には撮影したビデオからスナップショット画像を抜き出して貼り付けます。

通常、1週間の調査で30枚~40枚になるかと思います。
例えば家から一歩も出ない対象者の場合でも、しっかりと調査を行っていることを依頼者に納得していただくため、一歩も出ていないという証拠をとります。

例えば、玄関ドアの隙間に紙くずを挟んで置き、それを1時間おきに見に行くことで、対象者が一歩も外へ出ていないことを確認します。
(ドアが開かなければ、紙くずは落ちません)

※別れさせ屋について
現代の探偵では別れさせ屋業を行っているところは無いと思います。

当時の探偵事務所ではプロである以上、引き受けたからには、H氏を納得させるだけの結果を出さなければなりませんから別れさせる方法も熟知しています。

しかし、心が痛むのです。探偵業を生業としている探偵が最も嫌がる調査が「別れさせ屋」を依頼されることなのです。

一方で、探偵業もビジネスなわけで。食えなければ経営は成り立ちません。ましてや、H氏は今回の調査だけでなく、別の調査も定期的に依頼してくださる優良クライアントだったのです。

結局、案の定、二人を別れさせることをH氏から依頼された所長Xは、二人を別れさせる工作をすることに。

別れさせ屋という仕事

別れさせ屋の仕事は簡単です。

所長Xは、I子さんの身内だと偽って、K氏に近づき、I子さんには結婚を約束するフィアンセがいて、すでにI子さんのお腹には、そのフィアンセとの間に赤ちゃんを授かっている、ここは私に免じてI子さんと別れてくれないか、と伝えました。

もちろん、これは別れさせるための偽の情報です。

気の弱いK氏は、多少動揺しながらも、「わかりました」といいました。私は、それだけではH氏が納得しないため、K氏に「念書」を書いてもらうように頼みました。

「念書」の内容は、『今後一切、I子さんに近づかない、携帯電話に記録されているI子さんの電話番号を全て削除する。』というものです。
このような場合、後でK氏が逆上する可能性も考えられるため、所長Xは、私らに、引き続き、K氏の素行調査を続けるように指示しました。これもH氏の依頼によるものです。

その後、K氏がやけを起こすことは無かったものの、K氏は自暴自棄になり、S県を離れたようです。その後のK氏の様子は知る由もなく‥探偵とは因果な商売だと思います。

結婚調査の期間、かかった費用

調査期間:1週間、調査員:3名、60万円(10万円/日×5日、聞込み10万円)

もしボディーガード的な調査を行う場合(ストーカー対策に類似する調査なら)、探偵1人3万円/時間~の料金は必要になってくるでしょう。

今回の結婚調査の事例まとめ

今回のH氏のような家柄が立派な方が、娘/孫娘の彼氏の調査をするのはよくあることです。

今回のような調査が「結婚調査」の範疇の調査内容になります。

必ずしも結婚する可能性が濃厚な相手や婚約後の話ではなく、婚約の前段階(つまり彼氏がいるとわかった段階で)調査をすることが一般的です。

なお、現代の探偵事務所では「別れさせ屋」のようなサービスを提供しているところはほとんど無いと思われます。今回のお話は10年以上前の私が所属していたとある探偵事務所の話です。

結婚調査を依頼される場合は信頼でき、コンプライアンスを重視している事務所に依頼されることをオススメします。